shinyflowersの日常を小説にしてみた①
控室とはライブ直後のアイドルの楽園と言っても過言ではない存在だろう。
特に夏 この季節はクーラが効いているのでライブで疲れた体にはたまらないはずだ。
いったい何人のアイドルがこの楽園の餌食になったのだろう。
さて、このプリパラ内のとある控室の一室。
札には「ShinyFlowers様」と書かれている。
その中では今まさにライブを終えたしーたろーとセツナがソファでくつろいでいた。
衣装から私服の半袖Tシャツに着替えているセツナに対して、暑い暑いと壊れたおもちゃのように唱え続けているしーたろー。
見かねたセツナが「しーちゃん着替えなくていいの? あまり汗だくの服のままでいたら風邪ひくよ」と優しく声をかける。
しかし返ってきたのは「だって暑いんだもーん」という理由になっているようないないような答えだった。
だがこのままほおってておくわけにもいかない。
せっかくの楽園のソファが汗まみれになってしまうのは気持ちのいいことではない。
セツナは着替え終わるとカバンから長めのタオルを一枚とりだしてしーたろーに向かって投げ渡し
「せめて汗ぐらいふきなよ」とひと声かける。
すかさずキャッチしたしーたろーは「サンキュ★」と一言だけ言うと背中の汗をふき始めた。
「サクラちゃんどんどん成長してきてるよね」
セツナはフェイスシートで顔を拭きながら今日も共演した後輩の話を始めた。
「んーそうだねー、はじめは優璃の従妹ってことでコネではいったみたいな感じだったけど」
優璃というのはネコミミの名前である。
しーたろーはあまりサクラのことは好きではないが信頼はしているようだ。
「これもしーちゃんがいつも練習付き合ってあげてるおかげかな?」
ニヤッと笑いながら悪戯顔でそういう
「あれはサクラが俺たちの脚ひっぱらないようにやってるだけだし」
そう言いつつしーたろーはタオルをたたみながら少しむっとした顔で頬を膨らませる。
そしてようやくソファから立ち着替えを始める。
同性ながらもセツナは反射的に顔を背けた。
「今もサクラちゃんはアンコール中だし、まぁしーちゃんもかわいく思ってるんだよね♪」
「もーうしつこいなー」
そう言いながらしーたろーもショートサロペットに着替え終わり再度ソファに腰を下ろす。
セツナもその横に座る。
「はいタオルあんがとぉ」
タオルをセツナに返しふたりは座ったままモニターを見始めた。
モニターにはアンコールライブ中のサクラとネコミミの映像が流れている。
ダンスや運動神経ではユニットでも一、二をあらそうレベルのネコミミ。
しかしそれに負けずとも劣らないのがサクラだ。
「サクラついこないだまでステップもままならなかったのに、たった二カ月でここまでやるなんてね」
しーたろうはモニターを見ながらそうつぶやき嬉しそうで、でもどこか複雑そうな顔をした。
それにきずいたセツナはすぐに声をかけた。
「しーちゃんどうしたの?」
しかし返事は返ってこず、かわりにしーたろうの手がセツナのふともも付近に降りてきた。
「ふぇ!?」
突然のことにびっくりして変な声をあげるセツナだがそんなのかまわずのしーたろーはポンポンと二回ひざをやさしくたたく。
そしててにあわせ少し低くしていた顔をあげ
「よし」
そう言うとそのまま頭からセツナのふともものほうに倒れこみひざまくらの状態となった。
「え!?ちょ‥‥ちょっとしーちゃん!急にどうしたの?」
再度すこしかたちをかえ問う。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
また少し黙り込む。
しーたろうがこんなことをしてくるのは珍しい。
ふざけているというような雰囲気でもないのでセツナは普段より優しくやわらかな声ではなしかける。
「もしかして‥‥甘えたいの?」
「コクン」
ひざに顔をうずくめているので表情は見えないがしーたろー確かにうなずいた。
「ちょっとだけこうさせていて」
小声で言ったその言葉はどこか普段よりおとなしかった。
セツナは目の前にあるそのちいさな頭を無言でなでつづけた。
モニターに映ったサクラたちのアンコールライブが終わったときしーたろうが口を開き始めた
「俺さ、ちょっと怖くなっちゃったんだ」
「怖い?」
「そ、ほら俺ってサクラにダンス教えてるじゃん?でもさあいつはほとんど俺をおい越してきている。あと半年もすれば抜かれそう。そりゃもちろんうれしいことではあるんだけど、本当にそうなったとき俺はどんな顔してここにいればいいんだろうって」
そう言いつつしーたろうが顔をうえにむける。
するとしーたろうが見たのは予想外の光景だった。
セツナが笑っていたのだ。
「ごめんごめんそんなことだったのかって思って(笑)」
「ちょ‥‥‥そんなことって」
「あーいやごめん馬鹿にしたわけではないよ。しーちゃんもそういうの気にするんだなーてね」
怒って起き上がろうとしてきたしーたろうを手でひざに押し戻す
「しーちゃんてさもっとガツガツ行くタイプじゃんだからもし抜かれちゃったとしても抜き返せばいいじゃん。何度でも容赦なくあたりつづける。それがしーちゃんでしょ?と言うかそのぐらいで私たちもサクラちゃんもしーちゃんを見捨てたりはしないよ」
そう言うとセツナは再び頭を撫で始めた。
「だからもっと自信をもってみちる♡」
「///」
恥ずかしくて声が出ないのか赤くなった顔を隠したいのか、しーたろーはまたセツナのひざに顔を
うずくめてしまった。
「ただいまもどりました」
「おつかれー!!おー☆☆クーラー涼しー!!」
そう言って戻ってきたのはサクラとネコミミの二人だ
「あ!おかえりなさい」
「おつかれー」
それを出迎えたのはソファにすわりモニターに映ったライブをみていたセツナとしーたろーだ。
「あれ?しーちゃんどうしたの目元赤いよ?」
ネコミミが違和感に気づくが、なんでもないよと一言で静める 。
そしてサクラに近づき肩に手を置く
一瞬驚くサクラだがすぐに冷静を取り戻す。
「どうしましたか?」
「なぁサクラ、おまえ俺を超えたいと思うか?」
「えっ?」
質問の意図がわからないサクラだったがとりあえず思ったことをそのまま言うことにした。
「それはもちろんですが私なんてまだまだ椎名先輩には及びません。ですが‥‥‥」
「ですが?」
しーたろーが聞き返すとサクラは気合のこもった顔で
「椎名先輩は私たちより常に一歩先を行ってくれると信じています。そして私はそんな本気の先輩とライブをして先輩の上に立ちたいです!!」
「おお!言い切った!!」
ネコミミがサクラの言葉に感服しているとしーたろうが笑いだした。
「ははっ、そっか。後輩にそこまで言われたらやるしかねえな」
「え?なに?しーちゃんどうしちゃったの!?」
ネコミミの疑問には一切触れずしーたろーはタオルをカバンから取り出しサクラに渡す。
「それで拭いたらトレーニングウェアに着替えて!!一緒に特訓するよ!!」
「いっ‥‥いまからですか!?わ、わかりました」
ライブ後の衝撃の一言に驚くサクラだが先輩の言うことなので従うしかない。
そんな二人を見て頭に?を浮かべるネコミミとやれやれと言う顔のセツナ。
結局その後はみんなで練習をすることになりヘトヘトになりながら帰る四人なのだった。